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赤レンガ
テーブルの上のほのかな蝋燭の灯りと

窓の向こうを走る星のような船の灯りと

そして美しい貴女が忘れられないと


それは あの夜

心がシャッターを押した

記憶の中に残る一枚の絵

ただ それだけのことよ
# by lunaparco | 2007-03-21 08:42 | mIssiNg
水中花
これ以上ないほどの

冷たい言葉で突きはなせば

斬りつけた赤い痛みは鉛のようで

飲み流さずに時間を止める




いつのまにか

またするりと懐に入られて

引き戻されてしまうから



あなたという水槽の中で

水にほとびた水中花のように

たちまち柔らかく開ききってしまうから
# by lunaparco | 2007-03-21 01:22 | SigH...
牡丹・・・忘れ草
銀座の街は東京のどの街よりも空が広くて好きです

待ち合わせの場所へと向かう夕暮れは

少しだけ日が伸びてほの明るく

まだひとの繰り出す前の交差点で

ふいに頬を撫でたミツコの香りに時が逆さに流れました



年上のアマンと過ごした貴方が連れていた残り香は

甘いのに気だるくて自己主張の強い香り

貴方はお菓子を頬っぺたにくっつけたまま

まるで気づかないでいる子どものように

無邪気にそして

世界中の悩みを背負っているような顔をして繕っていました


そんな貴方の横顔が何故か微笑ましくも哀しくて

私は柔らかなその髪をかきあげながら


いまにも落花しそうなほど男の欲情を集めて

たわわに咲き誇った牡丹の花びらのような

その女(ひと)の赤いルージュがよく似合う唇や

すべらかな肌の下に隠れた

黄昏のにじみでるものうげな皮膚にまで

かすかな羨望を抱いていました


暖かな冬にはもう早咲きの牡丹が咲いています

淫らにあふれるような花



その香りが私に向けられた嫉妬と知ったのは

ずっと後のことでした

香りに情念を残していった女(ひと)


昏れなずみの空はいつしか薄墨色の帳を巻き下ろすと

街はその女(ひと)の瞳のような灯りで揺れはじめ

とりすました夜の銀座へともどっていったのでした
# by lunaparco | 2007-02-17 18:52 | SigH...
海月
官能の海へは爪先から入っていく

合わせ鏡のような瞳が揺れる

寄せてはかえす波が砂をすくう

視線も 指も唇も腕も舌も唾液も

絡み合いながら波間に漂う

漣が熾きては

たちまち全身に燃え移り

あふれかえる

月のない夜は

静かなうねりで満ちていく
# by lunaparco | 2007-02-14 01:25 | noCtuRne
誘い香
夕映えの消えた空が

菫色に暮れなずむと

もろさと艶を

雫のようにたたえた梅の蕾が綻ぶ

引きとめるほどの芳醇な香りを

白い吐息のように宵闇にかもして

道しるべになるために・・・
# by lunaparco | 2007-02-12 21:10 | mIssiNg



もっと愛して 深く愛して...
by lunaparco
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