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テーブルの上のほのかな蝋燭の灯りと
窓の向こうを走る星のような船の灯りと そして美しい貴女が忘れられないと それは あの夜 心がシャッターを押した 記憶の中に残る一枚の絵 ただ それだけのことよ
これ以上ないほどの
冷たい言葉で突きはなせば 斬りつけた赤い痛みは鉛のようで 飲み流さずに時間を止める いつのまにか またするりと懐に入られて 引き戻されてしまうから あなたという水槽の中で 水にほとびた水中花のように たちまち柔らかく開ききってしまうから
銀座の街は東京のどの街よりも空が広くて好きです
待ち合わせの場所へと向かう夕暮れは 少しだけ日が伸びてほの明るく まだひとの繰り出す前の交差点で ふいに頬を撫でたミツコの香りに時が逆さに流れました 年上のアマンと過ごした貴方が連れていた残り香は 甘いのに気だるくて自己主張の強い香り 貴方はお菓子を頬っぺたにくっつけたまま まるで気づかないでいる子どものように 無邪気にそして 世界中の悩みを背負っているような顔をして繕っていました そんな貴方の横顔が何故か微笑ましくも哀しくて 私は柔らかなその髪をかきあげながら いまにも落花しそうなほど男の欲情を集めて たわわに咲き誇った牡丹の花びらのような その女(ひと)の赤いルージュがよく似合う唇や すべらかな肌の下に隠れた 黄昏のにじみでるものうげな皮膚にまで かすかな羨望を抱いていました 暖かな冬にはもう早咲きの牡丹が咲いています 淫らにあふれるような花 その香りが私に向けられた嫉妬と知ったのは ずっと後のことでした 香りに情念を残していった女(ひと) 昏れなずみの空はいつしか薄墨色の帳を巻き下ろすと 街はその女(ひと)の瞳のような灯りで揺れはじめ とりすました夜の銀座へともどっていったのでした
官能の海へは爪先から入っていく
合わせ鏡のような瞳が揺れる 寄せてはかえす波が砂をすくう 視線も 指も唇も腕も舌も唾液も 絡み合いながら波間に漂う 漣が熾きては たちまち全身に燃え移り あふれかえる 月のない夜は 静かなうねりで満ちていく
夕映えの消えた空が
菫色に暮れなずむと もろさと艶を 雫のようにたたえた梅の蕾が綻ぶ 引きとめるほどの芳醇な香りを 白い吐息のように宵闇にかもして 道しるべになるために・・・
あなたの熱に
ゆっくりと昂められて 少しずつ溶けましょう あなたの好きな形に わたしを作って欲しいから その日にあげる ほろ苦いチョコレートはわたし
赤い月が満ちた夜
するりと ほどけかかった糸が繋がれば また夢を彷徨う時が蘇る 大人たちの迷いは長く 決め事は反比例して 迷いがなく 時は瞬く間に過ぎていく
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